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受験指導業務の実際その2

 社労士の4号業務の1つである受験指導業務の実際について、話してきました。前回は、次の2点を説明しました。
1 どんな人が受験指導業務に就いているか
2 やりがいのある仕事か
 今号では、3 受験指導業務の収入についてお話してみようと思います。

3 収入はどれくらいか
 受験指導講師は、一見"花形職業"のように見えます。なぜなら、受験生にとって講師は神様だからです。自分の目標である社労士試験にすでに合格しているだけでも後光が射して見えるのに、加えてなんと"人に教えて"いたりします。壇上の講師は常にかっこよく見え、多くの受験生が講師に"あこがれ"の気持ちを抱きます。
 となれば、収入についても、講師が放つ輝きに正比例しているだろうと考えるのは、いかにも自然なことでしょう。分かりやすく言えば、「あんなにかっこいい仕事なのだから、収入も高いに決まってる」というわけです。
 さてさて、その実態はどうでしょうか。
 結論から先に言えば、講師は決して儲かる商売ではありません。多くの講師は、講義料だけでは生活できない程度しか稼いでいないのです。一般のサラリーマン程度の収入を確保している講師は、ごくごくわずかなのです。
 びっくりされたかもしれませんが、それが現実です。
 順を追って話をしましょう。まず、講師の就業形態について説明して、収入の話はその後ですることにします。

@ 講師の就業形態
受験校の講師の就業形態は2種類あります。専門学校の社員(もしくはアルバイト)が講義もやっているというパターンと、外部の開業社労士が学校と契約を結んで、講義のみを請け負って行うというパターンです。割合的には、正確な統計はありませんが、おそらく後者より前者の方が数が多いと思います。

<講師の就業形態パターン>
パターン 業務内容
学校のスタッフとなる 社員となる 社労士課の業務全般
アルバイトとなる 社労士課の業務の一部
開業社労士が学校と契約を結ぶ 講義
ときには教材製作

 1つずつ説明しましょう。

ア、学校のスタッフとなる
 ●社員となる
  試験に合格した後、特定の学校の社員となって、「社労士課」に配属されます。社員なのですから、社労士課の業務全般を行います。顧客管理、学校内部でのさまざまな連絡、講義スケジュールの作成、講義で使用する教材や問題の作成など、仕事は無数に存在するでしょう。
 そして、その社労士課の業務の一環として、ときに講義も行います。たとえばある学校の本社の社労士課に勤めるある社員A君の1日を見てみましょう。この学校は、本社と別に校舎を都内に数箇所持っています。

時間 業務
8:30 出社
9:00 〜11:00 ミーティング
11:00〜12:00 各校との連絡調整
12:00〜13:00 食事
13:00〜14:00 講師との連絡調整
14:00〜17:00 教材製作
17:00 品川校に向けて出発
18:00〜18:30 品川校スタッフとの簡単なミーティング
19:00〜21:30 講義
21:30 帰路に着く

 A君は、社労士課社員としての業務を一日こなした後、夜は講師として教壇に立っています。一日の労働時間は相当なものになりますよね。これが毎日だと当然疲れ果ててしまいますので、学校側でうまくローテーションを組んで、週2回程度というパターンが多いようです。

 ●アルバイトとなる
 試験勉強中や試験合格後に、ある特定の学校にアルバイトとして勤務し、教材製作や講義を行います。
 社員になるパターンとの違いは、いわゆる一般的な社員とアルバイトとの相違と同様と考えてください。すなわち、社員ほど責任がなく仕事の量も少ないが、その分給料は安いです。ある学校に勤めるアルバイトB君の一日を見てみましょう。

時間 業務
9:00 出社
9:00〜12:00 教材製作
12:00〜13:00 食事
13:00〜17:00 教材製作
17:30 品川校に向けて出発
19:00〜21:30 講義
21:30 帰路に着く

  社員A君との違いは、一目瞭然ですよね。A君は社員ですから、日中いろいろな仕事をこなさなければなりませんが、アルバイトのB君は日がな一日教材製作にいそしんでいます。

イ、開業社労士が学校と契約を結ぶ
 C君は開業社労士です。当然自分で事務所を持っていて、日ごろは本業に余念がありません。そんなC君が、平日の夜や日曜日になると、講師として特定の学校の教壇に立つのです。同じようにC君のある一日を見てみます。

時間 業務
7:00 起床
8:00 得意先訪問へ出発
9:00〜12:00 得意先3社を訪問
12:00〜12:30 食事
13:00〜15:00 役所回り
15:00〜17:30 喫茶店で書類作成
17:30 新宿校に向け出発
19:00〜21:30 講義
21:30 帰路に着く

A講師の収入
 講師の就業形態については、分かっていただけましたね。次はいよいよ収入です。こちらも上の3つのパターンに分けてお話しすることにします。
 なお、以下の話はあくまでも一般論であって、現実には、各学校によってバラツキがあることをお断りしておきます。

ア、学校のスタッフになる
 ●社員となる(A君の場合)
 A君は社員ですから、夜の講義とは別に毎月決まったサラリーをもらいます。サラリーの額は、A君の年齢、学歴、社歴、能力などによって異なりますから、一概には言えません。まあ、その点は一般のサラリーマンと同じと思ってください(ただ、あえて言いますと、この業界のサラリーは、他業種と比べると、さほど高いとは言えないようです。言葉が適当かどうかわかりませが、"平均以下"。)。
 サラリーと別に、講義を行えば講義料がもらえます。講義料は、通常時間給で計算されます。同じ講義をしても、開業社労士C君よりも安いのが相場のようです。サラリーと同じく経験などいろいろな要素で変わってきますが、だいだい、時間当たり3,000円から5,000円程度であるようです。
 仮に3,000円として、2時間半の講義を週2回行うと、15,000円です。1月が4週として計算すると、60,000/月という金額になります。
 いかがでしょう。時給3,000円と聞くと高そうに思えますが、1月当たりで見れば、普通の会社の残業代の方がもっと多いのではないでしょうか。

 ●アルバイトとなる(B君の場合)
 アルバイトのB君は、日中は教材製作、夜は講義を行います。どちらも時間給ですが、金額は違います。
 日中は、時間当たり800円から1,000円程度です。月曜から金曜まで毎日働いたとしても、月当たりたいした金額にはなりませんよね。
 夜の講義料は、少しはいいのですが、社員のA君よりは安く設定されていて、2,000円/時間です。A君と同じペースで講義をすると、月当り40,000円となります。日中の時給と併せても、手取り20万円はなかなか達しない計算ですよね。

イ、開業社労士が学校と契約する(C君の場合)
 開業社労士のC君は、とある学校と契約しています。C君の仕事は、週2回(2時間半/回)および日曜日の講義(5時間/日)と、不定期に依頼がある教材製作です。教材製作については、この学校では基本的には社員やアルバイトの仕事なのですが、ときどき手が回らなくなると、C君に回ってくるのです。
 開業社労士が学校と契約した場合の講義料は、時間当たり4000円〜7,000円程度が相場です。C君はまだ駆け出しなので、4,000円で働かせてもらっています。
 教材製作は、作成する教材によっても異なりますが、おおむね、テキストなら3,000円/ページ程度、問題なら3,000円/問程度です。C君も、このレベルだとします。
 A君、B君と同じように、C君の月収を割り出してみましょう。

<C君の月収>
講義料
平日 4,000円×2.5×2.×4     =80,000円
日曜 4,000円×5×4        =80,000円
製作料(テキスト20ページ、問題30問と仮定)
テキスト 3,000円×20         =60,000円
問題 3,000円×30         =90,000円
合計                    310,000円

 C君の収入は一見多そうに見えますが、意外とそうでもありません。理由はいくつかあります。

・ボーナスがないので、年収は低い。
・教材製作の依頼はいつもあるとは限らない。ない月の方が多い。
・講義も、年間を通じてコンスタントにあるわけではない。試験が終わった8月から10月頃まではあまりないのが常である。

 その点を割り引いて計算し直せば、C君の年収は、税込みで300万円も行けば、良いほうだと思われます。

Bつらい要素はまだある
 以上からわかることは、社員になる、アルバイトになる、開業社労士として学校と契約するのいずれの方法を採るにしても、受験指導業務は、それほど儲かる商売ではないということです。その点、はた目よりは、"寂しい"仕事だということができますよね。
 実は、受験指導業務を"寂しい仕事"にしてしまう要素はまだあるのです。

(1)人気商売である
(2)予習が大変
(3)書籍などの購入費用がかさむ

(1)人気商売である
 講師は人気商売です。受験生の方々はみな真剣ですから、講師も誠心誠意最高グレードの講義を展開しなければなりません。「金が安いから」などの言い訳は、当然通用しないのです。
 ちょっとだめだと、人気はがた落ちになります。人気がなければ人を呼べないのですから、学校側から見れば、「生産性の低い講師」ということになります。生産性が著しく低い講師を雇っておく余裕などありませんから、そんな講師はすぐにリストラの対象になってしまうわけです。
 金が安い割りに大変、にもかかわらずすぐくびになる、ホントに恐ろしい商売なのです。その点、アイドル歌手よりももっと厳しい仕事なのかもしれません。

(2)予習が大変
 この点は前号でも書きました。講義の時給が3,000円とか5,000円とか言うと、一見「すごく高い」との印象を受けるかもしれませんが、実は、講義のために費やす準備時間が膨大なのです。当然のことながら、学校は、準備時間にはお金を払ってくれません。
 よく講師仲間で言う冗談があります。
「準備時間も入れて時給計算すると、最低賃金を割ってるよね」

(3)書籍などの購入費用がかさむ
 人前で話をするのですから、日ごろから徹底した勉強が必要です。それに、社労士試験の範囲は法改正が頻繁です。
 そんなわけで、講師は常々情報収集にいそしんでおく必要があります。情報収集にもいろいろな方法がありますが、なんだかんだ言っても、もっとも有効な手段は書籍です。
 そこで、書籍を購入する費用が発生します。始末が悪いことに、社労士関係の専門書は価格が高いのが常なので、薄給の受験指導講師にはとてもつらいのです。

Cでも・・・、
 と、今号では、講師の収入面から、マインスポイントばかりを敢えて論じてみました。いかがですか。受験指導講師になろうという意欲が薄れてしまいましたか。
 でも、以上のような事実にもかかわらず、やはり私は、あなたにぜひとも受験指導講師になってほしいと思うのです。
 まず、収入面ですが、今号の話は、あくまでも一般論であることを忘れてはなりません。確かに、多くの講師は薄給に甘んじていますが、なかには受験指導だけで年収数千万円の人もいるのです。
 理由は、講師は人気商売だからです。人気があって客が呼べる講師には、学校も多額の報酬を払ってくれるのです。良い講師になれれば、受験指導だけでも、十分に食べていけるのです。
 さらに、前号でお話ししたとおり、受験指導は本当にやりがいのある仕事です。場合によって薄給に甘んじたとしても、お金で買えないやりがいを手にすることのできる仕事なのです。
  やりがいを持って楽しく社会貢献ができ、生活も安定するのですから、「受験指導業務は最高の仕事の一つである」と言ってよいと思うのです。


その(17)に続く

現在の真島からちょっと補足
 今読み返してみると、「ちょっと否定的に書きすぎたかなぁ」と思いますが、でも、紛れもない事実なのですから仕方がありませんね。受験指導に限らず、どの業界でも昨今は「薄利多売」が常識ですから、忙しいだけであまり儲からないのもいたし方ありません。
 大切なことは、仕事に生きがいを見出せるかどうかです。その点は、受験指導という仕事はピカ一です。その証拠に、私はこの仕事をもう10年も続けていますし、これからも続けていくつもりです。
 


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