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 4号業務への道

 1,2,3号業務に関する解説は、前号までで終わりです。今号からは、4号業務について考えていくことにします。
 ご承知のように、社労士法2条は、社労士の仕事を1,2,3号業務に分けて、定義づけをしています。社労士法2条に4号という枝番は存在しないのですから、4号業務という単語が私の造語であることは、容易にご推察いただけるでしょう。
 大切なことは、確かに社労士法2条は社労士の業務の定義づけを行っていますが、だからといって、"2条に定義づけされた業務以外を行ってはならない"としているわけではないことです。法律的に言えば、法2条はあくまでも「例示列挙」であって「限定列挙」ではないのです。1,2,3号業務以外でも、社労士資格を生かして行える業務があれば、行ってもかまわないのです。
 それらの業務を私は、"4号業務"と名づけました。しばらくの間は、4号業務を1つ1つ取り上げ、その業務内容、将来性などについて、あなたと一緒に考えていきたいと思います。
 解説を始める前に、ぜひあなたにしっかりと認識しておいていただきたいことがあります。それは、4号業務は、私がこれから解説をするもので、すべてというわけではないことです。4号業務の定義は、"1,2,3号業務以外のすべての業務"なのですから、自ずと無限の可能性を秘めていることになります。これまで誰も手がけなかったすきま的業務もきっと存在するでしょうし、時代の流れの中から新たに生まれてくる業務もあることでしょう。
 "時代の流れの中から新たに生まれてくるであろう業務"について、少しお話しておきます。
 未来は驚きに満ちています。時代はどんどん進み、昨日まではSFの世界の話に過ぎなかったことが今日は現実となります。私の若い頃は夢物語に過ぎなかった携帯電話が今は常識ですし、聞くところによると、火星への有人旅行ももうすぐ実現するとのことです。
 時代の流れはあまりにも早い。したがって、10年後、20年後の未来を確実に予想できる人など誰もいないのです。われわれが予想だにしなかった未来が訪れたとき、新たな4号業務が必然的に生まれてくるはずだと、私は思うのです。
 人間は、自分の限られた経験の中でしかものが言えないかわいそうな生き物です。私も人間ですので、これから語ろうとしている4号業務は、私が経験したものに限られるのです。新しい4号業務は、ぜひ、あなた自身で発見していただきたいと思います。

<4号業務の種類>
種類 内容
受験指導 社労士試験受験指導
講演 社労士の専門分野について1.5〜2時間程度
企業研修 企業の社員教育の一翼を担う。4〜10時間程度
新聞・雑誌の記事執筆 新聞社、雑誌社から依頼を受けて、社労士の専門分野について執筆
書籍の執筆 ・ 社労士の専門分野について、一般読者向け
・ 社労士試験用受験本
年金相談 金融機関と提携。一般人対象に年金に関する全般的な相談
その他 ???(あなたが自分で見つけてください)

 まずは、受験指導からです。受験指導は私の本業ですので、私としてもある種のこだわりを持っています。場合によっては少し話が長くなるかもしれませんが、よろしくおつき合いのほどを…。

受験指導業務の実際

 受験指導業務とは、専門学校が実施する「社労士試験受験講座」の講師の仕事です。ときには、講座で使用するレジュメや問題(答案練習講座用)の作成の仕事も含まれます。正確な統計は存在しないのですが、各受験校に複数の講師がいるのですから、受験指導業務に就いている社労士の数は、実際結構多いのです。
 まず、受験指導業務の実際を明らかにしてみましょう。受験時代あたながどこぞの専門学校に通われたとすれば、教壇で自信満々でしゃべっている講師は、輝いて見えたことでしょう。ひょっとしたら、「自分もいつかああなりたい」とお考えになっていたかもしれません。
 受験指導講師は、本当にそんなに"かっこいい"仕事なのでしょうか。あなたが受験生としての立場から見ているだけでは窺い知れない裏事情も含めて、受験指導業務の真の姿を明らかにしていきましょう。関係者としてはできれば隠しておきたい舞台裏を白日の下にさらすのですから、場合によってはどこかの専門学校や講師からクレームが来るかもしれませんが、知ったことではありません。

1 どんな人が受験指導業務に就いているか

 受験指導業務に就いている社労士とは、どんな人たちなのでしょうか。
 もちろん例外はありますが、だいたい試験合格から1〜2年目の方が多いようです。試験に合格して開業し、顧客獲得のために営業活動にいそしんでも、食べていけるだけの顧客数を獲得するには、ある程度の時間が必要です。一般的に、"開業3年後に食べていけるようになれば成功"と言われているのですから、1.2.3号業務だけにこだわっていては、3年間は生活ができないのが相場と言っていいでしょう。
 そこで、そんな社労士の多くが、専門学校の門をたたきます。うまく採用されれば、定期的に講義を回してもらえますから、ある程度の収入になります。彼らはいわば、1.2.3号業務で食べていけるだけの顧客を獲得できるまでの間の"つなぎ"として、受験指導業務を指向するのです。
 受験指導業務を"つなぎ"的に捉えている人はいいかげんな仕事しかしないのではないか、との意見もあるでしょうが、必ずしもそうとは限りません。なぜなら、仕事をきちんとやるか、いいかげんにやるかは、その人間のタイプによるからです。本業ですらいいかげんにしかできない人間もいますし、たとえ"つなぎ"であっても、やるからには真剣に一所懸命やる人もいます。
 ただし、一所懸命やるタイプの人も、心の中ではあくまでも"つなぎ"として捉えている人が多いですから、1,2.3業務が軌道に乗った途端、受験指導をやめてしまいます。なかなか優秀な講師が育たない理由は、ここにあります。
 なかには、受験指導の道を究めようとする人も存在します(他ならぬ私もその一人です)。どんな仕事でもそうですが、"一人前"になるには、最低でも5〜6年は必要でしょう。受験指導は大変やりがいのある素晴らしい仕事です。受験指導業務をこよなく愛する者の1人として、受験指導の道を究めようとする人が1人でも多く現れることを、切に願っています。

2 やりがいのある仕事か

 表面的には華やかに見える仕事でも本人は陰で大変な苦労をしている、という例は多いものです。受験指導はどうでしょうか。
 私の受験指導歴7年の経験からいうと、一言で言って、本当に大変です。大変な理由を、箇条書きにしてみましょう。

@ 予習が大変
A 受講生は必死なので、いいかげんなことは絶対にできない
B 足が疲れる。ハッキリ言って肉体労働である

@ について
 とにかく予習が大変です。1回の講義がたとえば2時間半だとして、多くの講師はそのために5〜10時間の予習をしています。私も、今はさすがにそれほどではありませんが、最初の頃は、来る日も来る日も朝から晩まで講義の予習ばかりしていたものです。
 "受験時代成績がすごく良かった人は、知識があるから、講師になってからもそんなにたくさんの予習はいらないのでは"とお思いかもしれませんが、残念ながらそれはまったく違います。
 理由は2つですね。一つは、人は忘れる動物だからです。受験時代に成績が良かった人は、その時点では確かに豊富な知識があったかもしれませんが、試験に合格し、いざ講師をはじめる段になると、多くの部分が忘却の彼方へと消え去ってしまっているものです。知識があいまいなままで講義に臨むのは、受講生の方々に対してあまりに失礼というものです。
 もう一つの理由は、受験勉強と講義では、要求される知識の質が異なるからです。あなたも経験があると思いますが、受験時代どうしても理解できなかった箇所は、「いいや、丸暗記しちゃえ」ということがあったでしょう。試験では、それはそれでも、得点が取れたりしたものです。
 受験指導では、あなたが受験時代丸暗記した知識をひけらかしたところで、なんの価値もありません。なぜなら、その知識は受講生の手元にある基本テキストにちゃんと載っているからです。講師自身がろくに理解していなくて、単に丸暗記しただけの情報をテキストに基づいてしゃべる講義を、俗に"テキスト棒読み講義"といいます。棒読み講師が人気がないことは言うまでもありません。
 受験指導で要求されるのは、あなた自身が情報を丸暗記していることではありません。もちろん覚えているに超したことはありませんが、極端な話、まったく覚えていなくても、テキストを見ればちゃんと書いてあるのです。講師はテキストを見ながらしゃべるのですから、覚えていなくても一向に困ることはありません。
 必要なことは、受講生に"理解"させることです。独学でテキストとにらめっこしていても決してわからない、制度の趣旨や構造をかみくだいて話すことなのです。人に理解させるためには、自分自身が理解していることが前提条件となります。膨大な予習が必要であるのは当然のことでしょう。
 残念なことですが、テキスト棒読み講師は、意外と多いのが実状です。そんな方に、私はぜひ問いかけたいのです。「受講生があなたに何を求めているか考えたことがありますか」
 独学でテキストを読んですべて理解できるのならば、専門学校に高いお金を払って通うわけがありません。彼らが学校に通う理由は、独力ではどうしても理解できないからです。彼らが専門学校にそして講師に求めるのは、「理解させてほしい」ということなのです。
 高いお金を払ってわくわくしながら専門学校の講義を受けたのに、講師がテキストを棒読みしていたら、彼らはどう感じるでしょうか。世のテキスト棒読み講師達は、少しは受講生の立場に立ってものを考えるべきです。

A について
 受講生はみな必死です。全員が「何が何でも試験に受かりたい」と思っているからです。真剣な気持ちが強くなれば、その分講師に対する期待も大きくなります。自分が人に期待されていると感じることは大きな喜びでもありますが、同時に大変な重圧をもたらすものです。
 1度でも受験指導の教壇に立ったことがある人ならば、受講生の視線の怖さを経験済みでしょう。教室中から自分に注がれる痛い程の視線に、私は今でもときどき打ちのめされそうになります。私は、講演、企業研修などで人前に立つ機会が多いのですが、あの真剣そのものの視線に出会えるのは、受験クラスだけです。
 極限まで真剣な方々の前で、自分はたった一人です。完全なる四面楚歌状態の中で己を奮い立たせるのは、至難の業なのです。
 真剣な受講生の方々は、講師に多くを期待します。だからこそ、裏切られたときは失望も大きくて、その真剣さがそのままの勢いで今度は講師批判へと向かいます。
 講師にしてみれば、「ただちょっと言い間違えただけなのに」とか「あの日はたまたま体調が悪かっただけなのに」と言い訳をしたくなるのでしょうが、そんな甘えは受験指導業界では一切通用しません。ある意味、人の一生を預かっている仕事なのですから、講師も極限までの真剣さが求められるのです。
 だからと言って、まじめ一辺倒の講義もまた嫌われます。ときに冗談も織り交ぜて、飽きさせない講義を展開しなければなりません。
 受講生の強い視線にさらされながら、"何が何でも理解させなければならない"、"絶対に間違ったことは言えない"とのプレッシャーと戦いつつ、それでもにこやかに冗談も言わなければならない。それに、 内心いくらつらくても、顔をひきつらせて冗談を言ってもそれは冗談にはなりません。あくまでも、"講義が楽しくてしかたがない"ふりをし続けなければならないのです。顔で笑って心で泣いてというやつですね。
 なんともはや、受験指導はつらいつらい商売なのです。

B について
 受験講師の仕事がピークを迎えるのは、5月以降のいわゆる直前期です。それまでは基幹講座だけであったのが、直前のオプション講座がたくさん入ってくるからです。

※ 基幹講座:各学校が設けているメイン講座。1コマ2時間〜3時間を週2〜3コマ、トータルで40〜50コマ程実施し、半年ほど続く。講師が一方的にしゃべる形式。試験合格に必要な情報のすべてが手に入る。真島社労士塾では「本論講座」

 忙しい講師だと、ほぼ毎日講義をするようなスケジュールになります。1コマの2時間や2時間半だって、ずっとしゃべり続けるのは大変ですが、これが毎日となると、いいかげんのどがおかしくなってきます。たとえて言うならば、ちょうど、徹夜でカラオケを歌った後の朝の状態です。あの状態が、毎日朝から晩まで続くのです(あくまでもたとえであって、私の実体験ではありませんので、誤解なく)。
 受講生の方々の中には、「先生、毎日毎日の講義大変ですね」とお声をかけてくださる優しい方もいらっしゃいます。そんなときは、溜まりに溜まった疲れがふっと抜けていくのを感じるものです(ときに、「先生、夕べはどこのカラオケボックスですか」などと、事実を完全にねじまげた発言をされる方がいらっしゃって、困っています)。
 しかし実は、講師が本当に疲れるのは、のどではなくて、足なのです。毎日立ちっぱなしでの講義が続くと、そのうち足がパンパンになり、夜寝ている間につったりします。私はもともと体力には自信がある方なのですが、歩いたり走ったりという運動で使う体力と、「立ちっぱなし」で使う体力とはどうやら別物のようで、5〜6月頃はけっこうつらい思いををしています。
 そんな状態でも、講義中はつらそうな顔は決してできないのですから、講師業は因果な商売なのです。

やはり話が長くなりそうです。次号も受験指導業務の話を続けます。次号では、おそらくあなたが一番知りたいであろう受験指導業務の収入にスポットを当てます。いよいよ核心ですね。

その(16)に続く

現在の真島からちょっと補足
 基幹講座の例を、「JUSINのジャンプアップ講座」から「真島社労士塾の本論講座」に修正させていただきました。
 受験指導業務に関するコメントは、次回させて頂きます。


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