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(第9回):松岡勇人先生


 

 こんにちは。社労士の松岡です。

 ジメジメとしてイヤ〜な季節の真っ只中、皆さんは如何お過ごしですか?

 年度更新が終了したのも束の間、算定基礎届の準備に追われている頃でしょうか?


【失敗あれこれ】

 さて、この連載を始めるにあたって、第1回目に次のような記述をしましたが、覚えていますか?

 「この連載では、特に、実務経験が全くない方が、速かれ遅かれ同じ経験や類似の経験をするであろうと思われることを中心にお話していきます。」

 同じ経験や類似の経験の中で、皆さんが一番聞いてみたいのは、おそらく失敗の経験だと思います。なぜ、「成功」ではなく、「失敗」の経験か?その理由は、失敗のお話を読んでおけば、皆さんは少なくとも私と同じ失敗をしなくて済みますからねぇ。失敗をしない ⇒ 成功ですよ。成功のお話を見聞し、成功の法則を学ぶことも大切だと思いますが、失敗のお話から教訓?を得ることも有意義だと私は思います。

 今号は、皆さんのご要望に勝手にお応えして、私が社労士登録をして間もない頃、犯した忘れられない大失敗について恥を忍んでお話することにしましょう。今号を読んで皆さんが同じ失敗をしないのであれば、恥を忍んでお話した甲斐があります。

《 聞くは一時の恥です!でもね・・・ 》

 巷で「難関」と言われる社労士試験に合格し、晴れて社労士登録を済ませると、行く場所によっては、周囲の人たちが若葉マーク付き新人社労士に対しても「先生」と呼んでくれます。「先生」、「先生」と呼ばれ続けると、自分が急に偉くなったような錯覚に陥ります(今振り返ってみるとお恥ずかしいお話ですが、私も登録後半年くらいの間は、自分が偉くなったように感じてしまいましたぁ・・・)。

 偉くなったように勘違いしている若葉マーク付き新人社労士、特に実務経験のない事務指定講習組の新人社労士は、受験勉強で頭に叩き込んできた知識(法律)のみしか頼るところがありません。したがって、実際にお仕事をすれば、そのすべてが初経験尽くということになります。書式を例にとっても、書式の1枚、1枚が初めて見るものばかりで、どのように記載すればよいのかわかりません(手続関係の書籍は、基本的な記載例を確認するには役立ちますが、本当に知りたい応用例は記載されていないことが多いので残念ながら役に立ちません)。

 こんな状況であっても、偉くなったと勘違いしている頃は、そのほとんどが初経験のお仕事であるにもかかわらず、知らないことに出くわすと、「先生」と呼ばれる変なプライド?が邪魔をして、ツイツイ知ったかぶりをしてしまうんですよねぇ・・・この変なプライド?は、ピカピカ光る社労士バッジのせいですかねぇ?!

 本当は聞きたくても(質問したくても)、「こんなこと聞いたら笑われるだろうなぁ・・・」と知らないことが恥ずかしくて、聞くことができません。しかし、考えようによっては、「知らないこと」は、若葉マーク付き新人社労士の特権でもあります。若葉マーク付き新人社労士なら聞けることも、5年、10年、15年・・・と時間が経過して、ベテラン社労士、大先生と呼ばれるようになったら、本当に恥ずかしくて聞けなくなってしまいますよぉ!その方がもっとみっともないと思いませんか?

 恥ずかしがっている暇があったら、若葉マークが付いている今のうちに聞きまくり、解決してしまいましょう!!

 聞いて(教えてもらって)、経験を積んで勉強すればよいのです。私の場合、登録後半年を経過した頃、この変なプライドはなくなりました。今では、わからないことがあれば、「教えてください!」と素直に聞くことができるようになりましたが、この心境の変化に達するには、実際に失敗をして、赤っ恥をかく経験を積まないと心境に変化は訪れないのかもしれません。

 社労士登録をして間もない頃、雇用保険被保険者資格取得届の届出をした際に、公共職業安定所(以下、「職安」と略します)で知ったか振りをしたときのお話をしましょう。

 職安:「Aさんの取得ですが、エラー30です。」

 エラー30って何よ?この暗号?初めて耳にする文言・・・受験生時代のテキスト、手続関係の書籍にも載ってなかった!と思いつつ、スーツの襟でピカピカと光る社労士バッジが邪魔をして、よせばよいのにここで知ったか振りをしてしまいましたぁ。

 松岡:「あぁ、エラー30ねぇ。承知しました!」

 あたかも、「エラー30」の意味をよく知っていると言わんばかりの反応を職安の窓口でしてしまいました。しかも、届け出た資格取得届はそのまま返されてしまいました。

 さあぁ、ここからが大変!

 事務所に戻ってから、色々調べましたが、「エラー30」の記述はどこにもありません。そのまま返され、「エラー」とあるのだから、どこかに記載漏れなどがあり受理できない理由があるのだろうとは簡単に推測できましたが、その意味するところは皆目見当も付きません。

 自分で調べるのは限界と判断し、知り合いの勉強家であるベテラン社労士に聞いてみたところ、「俺も『エラー30』って初めて聞いたよ!手続関係はほとんどやらないからねぇ・・・。」との回答。結局、「エラー30」の意味を教えてくれたのは、手続関係をメインにお仕事をしている私より1年先輩の社労士でした・・・ベテラン社労士が必ずしも知っているとは限らないので、専門にしている方に聞くのが良いです。本当は、職安の窓口で、すぐに聞けば一番良かったのです。

 「エラー30」とは、「A社を退職し、転職先のB社で資格取得の届出をした際に、まだ前職のA社で資格喪失届が未提出のままで、B社での新たな資格取得ができない状態のこと」を意味する職安内での隠語だそうです。

 今では「エラー30」と聞けば、顧問先にすぐに連絡をして「まだ前職のA社で資格喪失届が提出されていないの、御社での資格取得ができません。すぐに資格喪失届を提出してもらうようA社にお願いしてください。」と適切な処理ができます。たった1回の一時の恥?を忍んで聞いておけば、次回以降の対応がこんなにも違うのです!

 ちなみに、手続関係をメインにお仕事をしている先輩社労士に聞いてみたところ、「エラー29」、「エラー31」は未だ聞いたことがないそうです。誰か知っていたら教えてください!!

《 「氏名の間違い」って、ホント怖いよ! 》

 皆さんは、自分の氏名を間違えて記載されたり、間違った読み方をされて、ムカッと気分を悪くした経験はありませんか?間違えようのない氏名の方でなければ、おそらく一度くらいは経験があるでしょう。

 一般常識をお持ちの方にとっても、人様の氏名の綴り方・読み方は大変難しいものです。そうでない方にとってはなおさらです。でも、氏名を間違えるのは、大変失礼なこととの認識が必要ですよ!その場限りの失礼だけならまだしも、のちに間違いが大変なことになってしまうこともあり得ます。

 今回の消えた年金問題も氏名の間違いが大変なことになってしまった一例ですよねぇ。

 消えた年金の原因は色々とあったようですが、社会保険庁でパソコン導入時に氏名の入力ミスが一要因として挙げられ、「社会保険庁が入力ミスを犯した!」と社会保険庁側にとっては悪い報道が一方的にされています。しかし、実際には、届け出た側にもおそらくミスは多々あったと思います(例えば、間違ったフリガナを振って届け出たとか、間違った漢字で届け出たとか・・・)。

 消えた年金の原因が社会保険庁側、届け出た側のいずれにしろ、人間ですから、細心の注意を心がけても、失敗は起します。したがって、「入力上のミス」または「届出ミス」と処理することもできるのかもしれませんが、お金(年金)も絡むことなので、そう簡単に済ませてもらっては困りますよね!

 私も間違った漢字で届け出て、大失敗した苦い経験があります。

 私の場合は、年金ではなく、離職証明書で届出ミス(入力ミス)を犯してしまいました・・・離職証明書も基本手当というお金に繋がるものなので、簡単に済ませる訳にはいきません。

 この届出ミスを犯した離職証明書は、私が作成した2人目か3人目でまだまだ不慣れな頃のお話です。

 顧問先の事務担当者から、「社員番号10番の×○ユウコが自己都合退職したので、離職の作成(注:法律上は、まだ職安に届け出る前ですから、「離職証明書」が正しいですが、実務上はマズ言いません。受験生の方は勘違いしないようご注意ください。)をお願いします。」との連絡を受け、すぐに作成しました。翌日には代表印を貰ってその足で職安に提出し、何事もなく、離職票は発行されました。

 届出ミスは、その後、離職票が×○ユウコさん本人に届いてから発覚しました。

 クレームの電話は、離職票を受け取った本人でも、顧問先の事務担当者でもなく、社長さんからでした。

社長:「先日、作成してもらった離職票、漢字が間違っているんですが、すぐに直してください!名前を間違えるなんて、最低ですよ。」

松岡:「大変申し訳ありません。すぐに新しい離職票を発行する手続を取ります!」

 作成依頼の連絡からこの会話までの間に、私はたった1人分の離職証明書の作成で2つ失敗を犯してしまいました。

 1つ目の失敗は、漢字の届出ミス(入力ミス)をしてしまいました。

 ×○ユウコさんの「ユウコ」は、「子」が正しかったのですが、「子」と間違えて私のパソコンに入力してしまいました(より正確に言えば、離職証明書作成時ではなく、最初にこの顧問先のデータを入力した際に入力ミスを犯してしまいました)。パッと見たときには、よく似た漢字のため、なんの迷いもなく間違えて入力してしまったのでしょう。1つ目の失敗は、届出(入力)の際にもう一度確認をすれば未然に防ぐことができた単純なものです。

 チョッと横道に逸れますが、1つ目の失敗を読んで、「ナンカ変じゃない?」と感じた方もいるかもしれません。そう感じた方は、「資格喪失届と離職証明書を届け出た際ではなく、資格取得届の際にソモソモ間違った漢字で届け出ていたのではないか?」と思ったハズです。つまり、「取得の際に正しく届け出ていれば、喪失の際に『漢字が違います』と職安でハネられるのではないか?」と感じたと思います。

 1つ目の失敗をしたときには知らなかったのですが、漢字の届出ミスでも職安でハネられることもなく、離職票が発行されてしまった原因(カラクリ)が別にありました。のちに別件で知ったのですが、雇用保険の資格取得届には漢字で氏名を記入する欄がありますが、社会保険事務所のパソコンとは異なり、職安のパソコン上では、今のところ、漢字で氏名を管理していないそうです。漢字で管理しているのは、事業所名だけらしいです。

 したがって、資格喪失届の際に、間違った漢字でも職安でハネられなかったんですね。

 もとに戻りましょう。

 2つ目の失敗は、怒っている社長さんとの電話での遣り取りで犯してしまいました。

 1度職安で発行された離職票の内容の訂正は、可能です。しかしながら、訂正の仕方は、訂正箇所に二重線が引かれ、正しい内容が記載され、確認印が押されるだけです。つまり、新しい(きれいな状態の)離職票が、再度、発行されることはないのです。2つ目の失敗は、離職票の訂正の流れを知らなかったことによる経験不足から生じたものです。

 「新しい離職票を発行してもらう」と社長さんに約束をしてしまいましたが、その約束を果たせず、2つ目の失敗を報告すると、社長さんはカンカンに怒ってしまいました。顧問契約をしたばかりで、社長さんとの関係もまだ築くこともできていない頃に1つのお仕事で2つも立て続けに失敗を犯してしまったので、結果的には契約解除になってしまいました。

 お仕事で失敗に気づいたら隠さず、すぐに訂正の処理を行えば、「次回はこのような失敗をしないようお願いしますよ!」とお叱りの厳重注意を受けますが、1回の失敗で最悪の契約解除になることは稀だと思います。

 ただし、私の場合のようにお金が関係する失敗大変シビアと考えておくのがよいでしょう。例えば、お金が関係する助成金は注意が必要ですよ。「簡単に貰えます!」な〜んて軽々しく言ったら、のちのち大変な大失敗、大やけどをすることにもなり得ますからご用心を!!

 社労士のお仕事に限りませんが、人間ですから、細心の注意を心がけても、失敗は起します。しかし、失敗を恐れず、失敗から多くのことを学べばよいのです。失敗を反省し、なぜ失敗を犯したのかを見極め、同じ失敗をしないように工夫するようにすればよいのです。また、失敗から学び、起こり得る失敗を想定して他のお仕事にも活かせばよいのです。私も今号でお話をした大失敗から多くのことを学び、他のお仕事に活かしています。

 初めて取り組むお仕事では、些細なことでも失敗を犯す可能性は高いですよね。

 初めて取り組むお仕事に対して失敗しないように、事前に勉強したり、聞いたり等の準備をして最善を尽くして取り組むことはもちろんですが、たぶん、事前に10年準備しても完璧にはならないでしょうね。初めて取り組むお仕事については、語弊があるかも知れませんが、「いつも見切り発車」です。

 ベテラン社労士や大先生と呼ばれる社労士も最初から完璧にできたわけではないでしょう。大先生と呼ばれる社労士は、数多くの失敗の積み重ねた結果、今(成功)があると思います・・・このように考えれば、気分が楽になりますねぇ。

 では、次回をお楽しみに!

第10回に続く