| 真島社労士塾トップ > 実務はこんなにおもしろい!> 第8回 | 真島社労士塾 | |
こんにちは、社会保険労務士の雨宮です。 若葉の目にしみる季節となりました。スーツ姿も板についてきた新入社員が意気揚揚と仕事に取り組んでいるか、厳しい研修で5月病になってしまったか、分かれ目の季節でもあります。 さて今回のテーマは、残業についてです。 サラリーマン、OLで溢れかえったある朝の駅の光景。 「おはようございます、田中ですが、電車が事故で遅れたので、30分程遅刻します。すみません、よろしくお願いします。」 この田中さんの会社、無断で遅刻するとその分の給料を引かれてしまうので、降りた駅では遅延証明を発行してもらい、急いで会社へと向ったことでしょう。 ≪仕事が終わってから30分間は残務整理の時間とします?≫ 私が以前会社員をしていた頃の話ですが、「仕事が終わってから30分間は残務整理の時間とします。」という文書が回覧されました。 仕事が終わったら早く帰りましょうと言っていたのかも知れません。ひょっとして、それまで法定内残業についても残業代を付けていたのを止めると宣言したのかも知れませんが、今となっては、知る由もありません。 ≪労働時間の把握は「現認」が原則?≫ 使用者が従業員一人ひとりの始業・終業時刻などを確認することを「現認」といいますが、労働時間はこの現認を原則とし、そうでない場合にはタイムカードなどの客観的な記録に基づいて計算します。 使用者は、朝早く来て入り口の前に待機し、帰り際になったら朝と同じように出口で待機していなければなりません。 では勤務時間中はどうでしょう。職場をぐるぐる回って仕事をしているか一日中見張っていなければならないのでしょうか?いくら何でも毎日毎日そんなことをしていたら、本業に差しさわりが出てしまいます。 今では機械式に読み取れるタイムカードもありますので、いかにも正確なように見受けられますが、本当にそうでしょうか? 従業員数が数10人、100人規模の会社の場合、最初にタイムカードを押した人と最後にタイムカードを押した人とではかなりの差が出ますが、その場合にはどうするのでしょうか? 1日の労働時間は分単位で計算しなければいけないのですが、現認も客観的な記録も、実際の労働時間の把握は結構難しい問題かも知れません。 ≪割増賃金の計算≫ 給与計算をしていると、大なり小なり残業代の計算がでてきます。必ずしも毎日発生するわけではありませんが、月で締めれば必ずといって良いくらい出てきます。 では、具体的に計算してみることにしましょう。 先ず、時間給で時間外労働の場合の計算です。仮に時間給1,000円で、ある月に10時間残業したとします。 割増率を2割5分とすると、1時間当り1,000円×0.25=250円、10時間残業したというのですから、250円×10時間=2,500円となります。 〜本当にこれでいいのかな?〜 割増部分だけの計算はこのようになりますが、どこか腑に落ちないところはありませんか?そうです、割り増しでない部分、つまり、10時間働いた部分の計算がこれでは反映されていませんよね。 そこで0.25の元の部分である1を加えて1.25とし、1,000円×1.25×10時間=12,500円、これが支給される金額と言うことになります。 次に、月給者の場合を考えてみることにしましょう。仮に月給200,000円で、先程と同様ある月に10時間残業したとします。 200,000円×1.25×10時間=2,500,000円、10時間残業して2,500,000円? これはおかしいですよね。 割増賃金は時間当たりで計算しなければいけなかったので、月給を時間当たりに換算する作業がでてきます。 大の月や小の月がありますので、月給を31で割るのかな、30で割るのかな、はて困ったなという訳ですが、ここで登場するのがその会社の年間の所定労働日数です。 オリンピックの年でなければ、365日から土・日・祝日などその会社の所定休日を引き、それを12で割った日数が月当たりの所定労働日数となります。 そして、月給200,000円を月当たりの所定労働日数で割って1日当たりの賃金を計算し、それを1日の所定労働時間で割って時間当たりに換算します。 最後に1.25倍して終了となります。 月給者の場合は、このような段階を踏んで計算しますが、1度計算したらそれでおしまいという訳にもいきません。 4年に1度は年間の日数が変わりますし、昇給や諸手当など元になる金額自体にも気を配らなければなりません。 遅延証明を提出した田中さんも、ひょっとしたらこの日は残業となり、残業代の計算の対象となったのかも知れません。 ≪残業はするもの?させるもの?≫ 恒常的な長時間労働に従事していた広告代理店の新入社員が、うつ病を発症して自殺したことに対して、会社に損害賠償責任があるのかが問われたのが電通事件でした。 この会社では、残業を行う場合は事前に所属長の許可を得ることとされていましたが、実際には事後承認になっていたようです。また、自己申告制による申告時間数も現実より少なく申告することも常態化していたようです。 当時の深夜労働・休日労働の時間数や徹夜の回数などは、常軌を逸しているとさえ言えるものでした。 自己申告であろうとなかろうと、残業は会社が命じるものです。 1日24時間から逆算すると、心身ともに疲労困憊状態になっていたことは容易に推察されます。このような状態を放置して若い命が失われてしまったことは残念です。 このところ、「名ばかり管理職」の実態が大きく取り上げられていますが、この方達も電通事件予備軍だったのかも知れません。 ≪残業しない手当?≫ 時間外労働をさせたら割増賃金を支払わなければならないと決められているので、会社は残業代を支払うことになります。これは働かせた時間の長さと引き換えに、ちょっと多目の給料を払うという仕組みです。 労働時間の長さではなく、労働の質に対して報酬を支払う仕組みができれば、こんなに良い事はないと思います。 例えば、それまで残業しなければこなせなかった仕事を定時でこなしたら割増賃金を支払うという仕組み(仮に「時間内労働割増賃金」とか「定刻終了割増賃金」とか名づけることにします。)はどうでしょうか? 言葉は悪いですが、「働け、働け、残業はするな。」こんな発想の方が、社員のモチベーションは上がると私は考えています。 トリンプインターナショナルを退職した吉越浩一郎社長がこんなことを言っていました。 「決められた時間内で戦う」というのは大事なルールの一つです。いくら残業して「勝った!勝った!」と胸を張ったところで、そんなのはルール違反、長時間働けば勝つのはあたりまえ。 吉越社長は戦いの場を世界に求めていますが、小さな会社であっても、時間内で勝負との発想が大切なのかも知れません。 ≪36協定の不思議≫ 残業させるには36協定を結ばなければならない、36協定を結べば残業させられると勘違いされている経営者の方もいらっしゃいます。流石に社労士で社長そのとおりですと返答する人はいないと思いますが、この36協定の協定書の説明や協定届は私達の大切な仕事の一つです。 ところで、この36協定届の用紙ですが、よく見ると不思議な個所があります。 協定しなければならない内容のうち、延長することができる時間については、「1日及び1日を超え3カ月以内の期間及び1年間としなければならない。」と定められています。 〜あれえ・・・印字されていないぞ〜 この協定届(様式第9号)をよく見ると、延長することができる時間の欄に1年間が印字されていません。 1日を超え3カ月以内の期間は、会社が1カ月とか自由に決めることができますので分かりますが、「・・・および1年間としなければならない。」と言っているのに1年間が印字されていないではありませんか。 まあ、些細なことは気にせず、実務では1年間(起算日4月1日)などと書き込むことにしています。 ≪最後に≫ 残業とはちょっと離れますが、給与計算って結構神経を使います。月変や算定で社会保険料が変わったり、雇用保険の料率が変わったり、2年前の所得税法改正の時のように税額表自体が変わったりと機械計算をしているからといって、入力・打ち出し、はい終了という訳にはいきません。 退職する場合には、給料の締め日で退職とはかぎりませんので、端数計算をどうするとか、住民税をどうするとか様々な要素を考えた上で計算する必要がでてきます。 だからこそ、よしこれでOKとなったときにはちょっとした充実感も味わえるものです。 相談事にしても然りです。ささやかな充実感の積み重ねで毎日を過していきたいものです。 |
||
| 第9回に続く |