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(第7回):松岡勇人先生



 こんにちは。社労士の松岡です! 

 皆さんは今年のGWをどのようにお過ごしになるのでしょうか?

 テレビ番組のある調査によると、今年のGWに11連休(4/265/6)を取る会社は、たったの2%だそうです。今年は祝日の配列が悪いですよね。個人的に11連休を取る人はもっといると思いますが、会社として平日3日(4/305/2)を休むのは取引先等の関係でやはり難しいのでしょうかね。 

 世間がGWで連休を楽しんでいても、社労士は仕事内容にもよりますが、思いのほかGWを楽しめないですよ(「GWの連休中は、お仕事は絶対にしない!」と決めてしまえば、それまでですが・・・)。 

 例えば、受験関係のお仕事をしている社労士は、GWの連休中は、法改正の講義や単発の特別講義があって、休めません! 

 受験関係の仕事をしていなくても顧問先をもっていれば、GWの連休中は労働保険概算・確定保険料申告書(以下、「申告書」と略す)作成に追われる場合もあり得ます(来年度から年度更新の申告・納付時期が6月1日から7月10日までの間に変更になる予定のため、GW中に追われるのは、今年が最後か?)。 

 「事前に準備しておけば、GWを楽しめるじゃないの?ダンドリが悪いんじゃないの?」と思われるかもしれません。通常は、3月初め頃に顧問先に年度更新に必要な賃金データをお願いして、資料が整い次第、労働保険料の計算に取り掛かっています(私の方は、前もって準備をしているのです!)。しかしながら、顧問先のなかには、年度更新に必要な賃金データをなかなか準備してくれないこともあるのです。理由は顧問先によって異なります。例えば、賃金締日の関係で遅れることもありますし、一人親方的に働いている社長さんは、日頃忙しくて準備が遅れる傾向にあります。 

 顧問先の方で準備が遅れたからといって、納期限である5月20日の直前に労働保険料の額をお知らせするのでは、概ねの額がわかっているにしても、「不親切」というものです。なぜならば、顧問先もなかには経営状態が芳しくなく、労働保険料の支払いのために金策に駆けずり回わらなければならないところもあるかもしれないからです。 

 遅れる理由がなんであれ、お仕事を頂いている以上、顧問先に迷惑がないようにしなければなりません・・・その意味で、GW返上もやむを得ません。遅れないよう再三にわたってご連絡をしても、毎年のように同じことをしているのであれば、そしてどうしても嫌ならば、最悪の場合、顧問先との契約解除も考えなければならないでしょう。 

 そのほか、GWを楽しめない理由に給料計算のお仕事があります。一般にお給料の支払日は、毎月25日払いが多いように思いますが、たまたま給与計算のお仕事を頂いた事業所が「月末締めの翌月10日払い」ということもあり得ます・・・この場合は、本当に休めませんね。 

 

【年度更新】

《「実務的な徴収法」って習ったけど・・・》

 社労士の受験生時代、皆さんの多くが、「徴収法は、労働保険の適用や保険料の納付に関する手続方法などを規定している、いわゆる手続法ですから、実務に直ぐに役立ちますよ。」というフレーズをおそらく聴いたことがあるでしょう。私も受験生時代にこのように講義で聴きました。 

 確かに徴収法は手続法ですから、実務に直ぐ役立つものだと思います。しかし、実務と法律(受験生時代の知識)には実務的な徴収法ですら、ズレ?があるのも事実です。 

 初めて年度更新をしたときのお話です。

 顧問先より年度更新に必要な資料一式をお預かりして、早速、計算に取り掛かりました。たまたま、初めて年度更新のお仕事をすることになったこの顧問先に67歳になる高年齢労働者がいました。 

 受験生時代、徴収法の計算問題で定番である「免除対象高年齢労働者の計算」。

 この計算のポイントは、「継続事業の一般保険料(概算・確定保険料)の額を計算するときに、保険年度の初日において、免除対象高年齢労働者がいる場合、免除対象高年齢労働者の雇用保険に係る保険料が、事業主負担分・被保険者負担分ともに、一般保険料の額より免除される」でした。 

 下書きで計算した用紙には、受験生時代の「免除対象高年齢労働者の計算」の知識に従い、計算を行いました。計算も終わったので、申告書に転記しようとしたときのことです。

 申告書の実物を見たのも、このときが初めてでしたが、申告書を目の前に、「アレ、どうなってんの?」と。 

 というのも、申告書に当然にあるべき欄がなかったからです。

 申告書の「概算保険料・雇用保険・高年齢労働者」の欄をよ〜く見てみると、高年齢労働者分の保険料算定基礎額の見込額を記入する欄はありますが、「高年齢労働者分の保険料率」と「概算保険料額(=保険料算定基礎額の見込額×保険料率)」の欄には斜線が引いてあります斜線が引いてあるということは、数字が記入できません。 

 つまり、実務上、概算保険料では、免除対象高年齢労働者の保険料控除しません確定保険料でのみ免除対象高年齢労働者の保険料を控除することになっています。概算保険料はあくまで概算であって、確定保険料で確定してくれれば良いということらしいです。受験生時代、免除対象高年齢労働者の取り扱いについて、耳にタコができるくらい、聴いた(習った)ポイントが実務で役に立たないのは、「一体なんなの?」と、この時は思ってしまいましたぁ! 

 そのほか、ズレ?とは異なりますが、「事務所労災」や「現場労災」など、受験生時代に使っていたテキストには、記載のない用語が顧問先や監督署で飛び交うと、若葉マークが付いている新人社労士は、「???」になってしまいます。でも、「徴収法に限らず、実務と法律では、ズレがあるものだ!」と思っておけば、戸惑いも減るでしょう・・・。 

 

《今年も来てくれて、助かったよぉ!?》

 今はなくなってしまったようですが(私がやっていないだけで、もしかしたらあるかもしれません・・・)、「年度更新書未提出事業場調査(通称:マル調)」というものがありました。いわゆる「行政協力」と呼ばれているものの1つです。 

 マル調は、労働局から委嘱をされ、臨時労働保険指導員として、納期限である5月20日を過ぎても、申告書が未提出である事業所を実際に回り、「なぜ申告書を提出しないのか?」をヒアリングしたり、または申告書の作成指導(指導でなく、実際に作成してあげる方が多かった!)をして、申告書を提出してもらうことを目的としています。 

 報酬は労働局の方より頂けるし(頂けるといっても、「行政協力」のため、微々たる報酬ですが・・・)、色々な事業所を回る経験ができるので、新人社労士にとっては勉強になるお仕事でした。でも、良いことばかりではありません。例えば、調査訪問する日をあらかじめ電話して決めておいたのに、実際に訪問してみると、なんと不在!・・・払いたくないから、逃げているつもりなの!? 

 マル調のお仕事で一番嫌だったことは、訪問する時期です。納期限である5月20日を過ぎても、申告書が未提出である事業所をチャックし、名簿を作成するのです。したがって、臨時労働保険指導員のお話があるのは、当然のことながら真夏です・・・汗ビッショリの季節です。真夏に訪問の約束をして不在だったら、余計に疲労度が増します! 

 マル調で訪問する事業所の中には、「あなたに、なんの権限があって、そんなことしているのか?身分証を出せ!」と攻撃的な対応をされることもあれば、「新種のオレオレ詐欺かい?」と疑われることもありました。 

 一方、マル調で訪問する事業所の中には、手ぐすねを引いて待っている社長さんもいました。

 私がマル調で訪問したある事業所のお話です。 

松 岡:「先日、労働保険料の申告書未提出の件でご連絡を入れました、臨時労働保険指導員の松岡です。」

社 長:「この間、連絡をくれた人ねぇ。来るのを待ってたよ!でも、今年は男性かぁ!去年は可愛いおねぇーちゃんだったんだけどなぁ〜。まぁーいいや。1年分の賃金台帳はここに用意してあるから。申告書はこれね。1時間後に出かけちゃうから、早く計算してね!」

松 岡:「・・・・・」 

 この社長さんは、毎年、臨時労働保険指導員が訪問してくるのを知っているのです(正確には覚えていないのですが、労働局から配布される名簿の備考欄には、確か「3年連続遅納」と赤字で記載されていたように思います。つまり、遅納の常習犯です!)。そして、故意に納期限を過ぎて申告書を提出しないのです。なぜならば、年度更新の手続を社労士にお仕事として依頼すれば報酬を支払う必要がありますが、臨時労働保険指導員が訪問してきて年度更新をやってくれれば、報酬の支払いは必要ないからです。 

 この事業所のマル調を終えたときは、「悪質だぁ!追徴金も延滞金もその他付けてあげられるものは何でもタップリと付けてやれ!」と思いましたが、その後、色々と経験を積んでみると、まだ良い方だと思えるようになりました。なぜならば、賃金台帳を見る限りは、雇用保険料を正確に毎月の給料から控除していたし、何よりも労働保険の適用事業所だからです。 

 中小・零細企業で労働保険の未加入事業所の中には、「弁当とケガ(仕事中のケガ、つまり労災)は自分持ち!」と言っているところもありました。 

 労働保険の未加入事業所が多いことを思えば、毎年、年度更新の提出期限を過ぎていても労働保険料は納付しているし、納付しようという意思があるのは良い方だと思えるようになりました。 

 

《怖〜い体験》

 正社員、パート・アルバイトまで含めると全社で約150名の給料計算のお仕事をしたことがあります。この会社の給与計算期間になると、毎月、テンキーを叩く指先が割れ、バンドエイドを貼っても血が滲むという事態になりました。とても痛々しかったのですが、仕事があるということは嬉しいことです。最初に社長さんとお話をしたとき、次の会話から始まりました。 

社 長:「過去にも数名の社労士さんに仕事を頼んだことがあるのだが、全然役に立たないので、クビにしたよ。松岡先生もクビにならないよう頑張ってください!」

松 岡:「ハイ、わかりました。頑張ります!」 

 「クビになった数名の社労士さんは、何故クビになったのか?どのようなヘマをしたのかなぁ?新人社労士さんだったのかなぁ?」などと思いはめぐらせたものの、社長さんには、前任者をクビにした理由は尋ねることはありませんでした・・・顧問先によっては、前任者に社労士さんがいれば、「月変(随時改定)漏れが多かった」、「対応が遅かった」など、「何故クビにしたのか」を話してくれることもあります。 

 ミスをすることもなく給与計算のお仕事をして数ヶ月後のある日、社長さんから添付ファイル付きのメールが届いていました。添付ファイルを開いてみると、そのデータは私が給与計算のお仕事を担当する前の賃金台帳でした。社長さんからのメールには、「労働保険料の申告・納付時期が近いので、次回、訪問するまでに労働保険料の計算をしてきて欲しい。」とありました。 

 早速、私は労働保険料の計算をして、次回、訪問に備えました。雇用保険の対象となるパートさんは少なかったのですが、人数が多かったので、労働保険料の納付額は軽く100万円を超えていました。 

 そして、後日、訪問したときのお話です・・・いつもは応接室に通されるのに、今日は何故か社長室へ。 

松 岡:「今年の労働保険料の納付額ですが、186万円になります。

社 長:「そうですか。186万円にもなりましたか。松岡先生、労働保険料の納付額の予算ですが、15万円しかないんですよ。納付額15万円で申告書を作成・提出して頂きたい!」

松 岡:「・・・、社長様、これはできません!税金に例えれば、脱税行為と同じです。私が虚偽の申告書を作成し、社労士印を押して提出すれば、社労士資格を剥奪されてしまいます!」

社 長:「できませんか?松岡先生も前の社労士さんと同じで役に立ちませんねぇ。」

松 岡:「お金がないのであれば、分割払いもできますが・・・。」

社 長:「分割払い?186万円も国に払うつもりはありませんよ。私は国の制度を信用していませんから・・・。私の言った納付額で申告書を作成・提出して頂けないのですねぇ?」

松 岡:「ハイ、できません!」

社 長:「わかりました。申告書の作成・提出は結構です!ただし、今月で顧問契約は打ち切りにしましょう!」 

 このお話は、色々な会社と接してきたなかで、私が社労士になってから一番怖い体験でした・・・背筋がゾッとするだけでなく、しばらく振るえが止まらなかったのを覚えています(チョッと大袈裟に聞こえるかもしれませんが、本当に怖かった!)。 

 結局、このお話があったとき、既にその月の給与計算が始まっていたので、給与計算だけを終えて、虚偽の申告をすることもなく、この顧問先とは、お付き合いがなくなりました・・・その後、この会社がどうなったか知る由もありませんが、初めて社長さんとお会いしたとき、「過去にも数名の社労士さんに仕事を頼んだことがあるのだが、全然役に立たないので、クビにしたよ。」の意味がこのときよくわかりました。 

 過去の社労士さんにも年度更新の時期になると、おそらく同じお話をしていたのでしょう。そして、どの社労士さんにも虚偽の申告書作成を断られ、その都度、クビにしたのでしょう・・・どのようにして毎年の年度更新を切り抜けていたかはわかりません。 

 虚偽の申告をする度胸があるのかを試されていたのか・・・などと私なりに色々と憶測してみましたが、何故、「労働保険料の納付額の予算が15万円しかないのに、計算をしてきて欲しい。」とわざわざメールをしてきたのか、その真相はわからないままです。 

 「1回ぐらいならいいだろう。」とか、「バレなければいいだろう。」という問題ではありません。法律を扱うことを仕事としている者ができる行為ではありません。労働保険料や社会保険料を安く済ませる方法が書籍等で紹介されていますが、これは税金でいうところの「節税」です。しかし、虚偽の申告は税金でいうところの「脱税」ですから、良いわけありません。 

 このようなお話は二度と体験したくないですし、仮に目の前にお金を積まれたとしても、法律を扱う者の端くれとして、毅然とした態度で、「ハイ、できません!」と断言しなければなりませんね! 

 

次回は、「失敗のあれこれ」についてお話する予定です。お楽しみに!

第8回に続く