真島社労士塾トップ > 実務はこんなにおもしろい!> 第10回 真島社労士塾

(第10回):雨宮直樹先生



 こんにちは、社会保険労務士の雨宮です。

 一気に夏本番、暑い季節がやってきました。早いもので、実務はこんなにおもしろいシリーズも、お話を頂いてからそろそろ1年になろうとしています。

 これまで、実務を通じて体験してきたことや感じたことなどをお話してきましたが、今回は「社会保険料の改定」についてお話したいと思います。

 毎月給与明細を見て、「税金も結構引かれているけど社会保険料も大きいなあ。」と感じている方もいるかと思います。
 一方、事業主にしてみれば倍の金額を支払うわけですから、これまた社会保険料の負担は大きいと考える気持ちも分からないわけではありません。

 個人事業の場合は、適用にならないケースもありますが法人の場合はそうはいきません。

 最初から社会保険の手続きをしてくださいと依頼があった場合は、必要書類を整えて印鑑をいただき提出すれば済むのですが、そうでない場合もあります。

 労働保険の手続きを依頼され賃金台帳を拝見すると、社会保険料が引かれていないケースに出くわすこともあります。依頼されていないとは言え、見て見ぬふりをするわけにはいきませんので、丁寧に説明し加入していただくことになります。

 ともあれ、新規適用を済ませたらいつまでもそのままというわけではありません。

 年に1度は昇給もあるでしょうし、残業代が増えることもあるでしょう。そのようなときには、月額変更届(月変)や算定基礎届(算定)の手続きが発生してきます。

≪月変は速やかに≫

 4月昇給と言う会社が多いと思いますが、昇給で大幅に賃金が変わると標準報酬月額の変更の手続きをします。これが「月変」といわれるものです。標準報酬月額が変わると社会保険料も変わってきます。

 昇給以外にも役職手当などがついたときにも、月変が必要になるときがありますが、この場合は新しく手当がついたことを気にかけているので忘れることはまずありません。

 気をつけなければいけないのが、給与体系が時給から月給へ変わったり、時給単価が変更されたときです。
 単価の変更で大幅に賃金が変わるケースはそれ程ないと思いますが、給与体系が変更になったときは要注意です。うっかりしていると忘れてしまいます。

 一時、毎月月変という時期もありました。入社当初は時給で、試用期間が過ぎると月給になるからでした。
社員の採用は必ずしも給与の締めに合わせるわけではないので、締めの途中で月給に変わったような場合には、何月から変更するのかその都度記録に付けておかないと後で分からなくなってしまいます。

 逆に降級による月変もあります。一般の社員ではなく、役員報酬が大幅に下がり月変に該当するときには、届出の他に取締役会議事録が必要になったりします。
 そのような時には、取締役会を開催してもらうよう依頼し、議事録を作成して捺印後合わせて提出することになります。

 月変の提出期限は、「速やかに」とされています。どうして、5日以内とか10日以内とか決められていないのか不思議に思ったことがあります。様々な状況が考えられるので速やかに提出してくださいということではないかと思っています。

 月変は別名、「随時改定」ともいいます。国語辞典によると随時とは、「時に応じて。気が向いたらいつでも。」とあります。

 流石に、「気が向いたら改定しても良いので提出してください。」という意味ではないと思いますが、「時に応じてその都度速やかに」となっているのではないでしょうか。

≪算定と残業代≫

 毎年、4月、5月、6月に支払った報酬とその平均額によって一人ひとりの標準報酬月額が決まり、翌年の8月まで適用されるのが「算定」です。

 別名、「定時決定」といいます。こちらは、7月10日が提出期限です。毎年定期に決まっているので、提出期限も決められるのでしょう。

 そうは言うものの、「社労士扱い」というのがあって、管轄によって期限は少しずつずれています。窓口が空いている時期を見計らって提出できるのでなかなか便利な制度だと思っています。

 さて、この算定ですが、たまたま4月から6月の3カ月に残業が多かったらどうなるのでしょう。

 たまたまとはいえ、給与から差し引かれる社会保険料が上がることになり、結果として手取りが少なくなり社員の不満がでることもあります。残業させられた上、給与が減ったというわけです。

 以前ですと、「将来の年金給付に反映するものですよ。」との説明で良かったのですが、昨今ではどうも説得力に欠けるようです。

 月変も同様です。折角昇給したのに、社会保険料が上がりそれほど手取りが増えないとの不満です。

 標準報酬が上がったからと言って、お医者さんに掛かったとき注射を1本おまけしてくれるというわけではありませんし、ご不満も分からないわけではありませんが、そういう仕組みだから仕方ないともいえます。

≪社会保険料の年度更新?≫

 そこで、住民税や年末調整のように、社会保険にも「年度更新」のような仕組みがあったら良いのかも知れません。

 年間の給与で考えれば、たまたま残業が多いとか少ないとかの不満は解消されそうです。
また、その方が実態に即しているようにも思えますが、いかがでしょうか。

 法令に則り適切な処理をするのが社労士の使命であることに間違いはありませんが、投げかけられた素朴な疑問から学ぶことも多々あります。

〜住民税は給与支払報告書が基になっています〜
 1月から12月までに支払われた給与や賞与の金額を記載した給与支払報告書を翌年の1月末日までに各市区町村に送付します。

 送付された給与支払報告書によって、その年の6月から来年の5月までの住民税の金額が決定されて会社に送られてきます。

 住民税の基になる金額は、残業代を含んだ年間の給与の総額ということになります。

〜年末調整は年間の所得で税額を決定します〜
 毎月の給与から所得税を源泉徴収しますが、その額は、通常は月額表を使い、扶養親族の人数などによって細かく決められています。

 1月から12月までの給与に賞与を足して年間の収入を計算し、給与所得控除をして税率を掛けます。そして、月々控除してきた源泉徴収税額との過不足を精算するという仕組みになっています。

 厳密には生命保険料控除とか損害保険料控除とか考慮する要素はありますが、大雑把に言うと、月々の税額の合計と年税額を比較して過不足を精算するということになります。

 こちらも、残業代などを含んだ年間の収入(所得)を基に税額が決まるということになります。

 労働保険料の年度更新も然りです。年度初めに概算で支払っておき、年度末に給与が確定した段階で過不足を精算するというものです。
 こちらは、各人別ではなく該当者全員の給与総額ですが、年間の収入を基にしているという点では同じといえます。

 住民税、年末調整、労働保険料の年度更新、いずれの場合も「年間の収入」で考えているところに共通点があります。

 つまり、社会保険料についてもこのような「年度更新」の仕組みを取り入れると、現状を反映したものになるのではないかと考えています。

≪算定や月変は大きな年中行事の一つです≫

 6カ月定期をどうする、4月から6月の3カ月間の途中で入社したり退社したりしたらどうする、休職期間に入ったら、また、休職明けだったらどうする、給与の締めと支払いの関係はどうか、端数処理はなどなど検討する要素は様々で、間違いのないよう正確に処理しなければなりません。

 それだけではありません。算定基礎届を提出するときには、総括表や附表(雇用に関する調査票)も合わせて提出しますが、これが結構悩ましかったりします。

 附表の中に、7月1日現在、報酬を支払っている人の人数を記入する個所がありますが、6月に退職した人は一体どうなるかということです。
 しかも、締めと支払いの関係で7月に入ってから支払いが発生する場合です。

 7月1日現在被保険者ではないので、算定基礎届へは記入しませんが、附表では「7月1日現在報酬を支払っている人」となっており、既に退職していても7月1日をまたいで支払いが発生するのは事実なのです。

 総括表と附表の人数が変わってきたりしますので、このような場合は事前によく事情を説明してから提出するようにします。人数が違うのはどうしてだろうと誰しも思うからです。

 そして、締めくくりは社会保険料の金額の変更を忘れないことです。金額が変わるのは暫く先の話なので、提出が終わると直ぐに一覧表を作り給与計算時に備えるようにしておきます。

 更に月変に該当していたりすると、数カ月タイミングがズレたりしますので、慎重に対応する必要があります。

 「全額払いの原則に反する」などと指摘されたら、社労士としてみっともないですから注意したいものです。

 毎年そのように取り組んでいますが、ひょっとして「健康保険法及び厚生年金保険法の標準報酬に関する大改正」の時代がやってくるかも知れません。

≪最後に≫

 今年も算定の時期は過ぎましたが、例年にない大きな現象がありました。
 それは、「特設会場」が無くなったという点です。先ほど提出期限のところで触れた「社労士扱い」のために、一つのフロアを算定用の特設会場として設けていたのですが、「年金特別便」の影響で今年は無くなりました。

 今年は連日大盛況な年金コーナーを通り抜け、通常の業務課へと向いました。
第11回に続く